認知症の家族が亡くなり(成年後見の事例)
2017.10.09更新
事 例
75歳のAさんは認知症になり、財産管理もままならない状態となってしまいました。Aさんの家族は遠方に住んでいたため、Aさんの財産管理を十分行うことができませんでした。
その後、Aさんが死亡し、相続が開始されましたが、Aさんの家族らが知らない間に、とあるリフォーム業者がAさんの任意後見人になり、Aさんの自宅の床の張り替えや外壁の塗り替え等のリフォーム工事を高額の報酬でしていたことが発覚しました。さらに、リフォーム代金は、Aさんの預金から支払われていたのです。
解 説
この場合、Aさんが騙されていたとすると、Aさんの相続人はAさんのリフォーム業者に対する不法行為に基づく損害賠償請求権を相続し、リフォーム業者に対し損害賠償請求をすることになります。
ただ、この場合、Aさんが騙されていたかどうかを立証しなければならず、Aさんは亡くなってしまっているため、その立証は困難な場合が多いでしょう。 また、不相当な価格でなされた有償行為が遺留分を侵害する場合、遺留分減殺請求権行使の対象となりますが、遺留分減殺請求をする場合には、当該有償行為をした当事者双方が遺留分を侵害することを知って有償行為をした必要があるため、本件のようにAさんが騙されていた場合には、遺留分減殺請求をすることも難しいでしょう。
以上のようなことから、Aさんのような場合、財産管理について専門家の成年後見人を選任する等の予防策を検討する必要があります。