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あの子には財産を渡したくない!(高齢者の虐待の事例)

2017.10.09更新

事 例

50歳の時に脳梗塞を煩ってから、体が思うように動かなくなり、生活するには介護が必要で病院を退院した後は息子夫婦の家に厄介になっていたAさん。お孫さんも介護を手伝ってくれて、10年ぐらいはつつがなく生活を送っていました。しかし、お孫さんが就職をして2年前に家を出たときから、何かあるごとに息子夫婦からの暴言を受ける事が増えてきました。

自分は体も満足に動かせない状況で他人様のお世話になるのは忍びない。出来れば家族である息子夫婦と一緒に暮らしていきたいと考えていたので、数々の暴言を甘んじて受けていたのですが、息子夫婦の態度はどんどんエスカレートしていき、最近ではAさんに対して暴力を振るうようになました。1ヶ月前にはとうとう、骨折や打撲で緊急入院しなければならない事態になってしまいました。

退院後ケアマネージャーの勧めで施設に入り、今はリハビリを受け徐々に平静を取り戻しつつあるのですが、息子夫婦との関係は修復不可能な状態となりました。Aさんには、事業家で既に他界した夫が残した3000万円の預貯金があります。自分に何かあったときに、この財産をあの息子夫婦だけには残したくないという気持ちが芽生えてきました。

解 説

高齢者への虐待の相談件数及び虐待判断件数など、年々増加の傾向にあります。高齢者社会が進む中、今後大きな問題のひとつである事は明らかです。家庭内で虐待を受けている高齢者についてみると、性別では女性が、年齢階級別では75歳以上の後期高齢者がといわゆる弱者への虐待が多いのが現状です。虐待の加害者としては、「息子」が最も多く、次いで、「配偶者」、「娘」、「息子の配偶者(嫁)」の順となっています。近しい家族からの虐待が多いという残念な結果となってしまっています。

最近では、高齢者夫婦で財産があれば、どちらかが他界した場合に備えていることが増えています。しかし、今回の乙丙さんのように話し合って処分方法まで決めていたものの、予想していなかった事態が生じて実現できなくなることが多くあります。

乙丙さん夫婦は、遺言書を書いて、マンションの売却などを第三者に予め任せておけば今回の事態を避けることができたはずです。

判断能力の低下を予想し、任意後見契約を締結し、その受任者をあわせて遺言執行者に指定しておけば、今回の乙丙さんの不安は解消されていました。

推定相続人の廃除

人が亡くなると相続が開始されます。相続とは、遺言で特段の意思表示をしない限り、被相続人の権利及び義務が相続人に対して当然に承継されます。相続財産は本来被相続人の財産だったのですから、被相続人は自分が亡くなった後の財産の取り扱いを「遺言」によって自由に取り決めることが出来ます。したがって、生前虐待等を受けていた家族へ財産を渡したくないという事を、遺言で意思表示する事が出来ます。但しこれには問題点もあります。

有効な遺言の必要性

自身の財産をどの様に取り扱うかを意思表示する遺言は、被相続人の最終意思決定です。間違いがあってはいけないので、遺言の記載は正確にする必要があり、法律で厳格に規定されています。せっかく遺言を残しても、その内容が法的に有効なものでない場合は、当該遺言は効力が無く、法定相続が開始されてしまいます。

遺留分

兄弟姉妹以外の相続人は法定された割合を承継する事が出来る権利=遺留分を有します。したがって兄弟姉妹以外の相続人が遺留分の権利を主張すると、たとえ被相続人が有効な遺言で相続分を排除しても、一定の割合の相続財産を受け取ることができてしまいます。

このような事態を避ける為に「推定相続人の廃除」という手続きがあります。

この推定相続人の廃除の手続きは、家庭裁判所に申立をする必要があります。この手続きが認められると、対象の推定相続人は相続人となることが出来なくなります。したがって裁判所が認めれば、排除された相続人は被相続人が亡くなっても相続分を得ることが出来ないと共に、遺留分すら主張する事が出来ません。

この申立は被相続人の生前はもちろん、遺言でも相続人の廃除をする旨の意思表示が出来ます。裁判所は廃除を認めるにあたって、慎重に判断する傾向があり、廃除が認められる件数は低くなっています。それでも廃除を求めたいということであれば、虐待を受けていることを証拠に残し、裁判所に主張する必要があります。

なお、被相続人と廃除された相続人との関係が修復された等で廃除を取り消したいと考えたとき、被相続人はいつでも家庭裁判所に推定相続人の廃除の取り消しを請求する事が出来ます。

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