住み慣れた我が家を妻に(配偶者居住権に関する事例)
2020.05.13更新
事 例
私(Aさん)には、長年同居してきた妻と、独立して離れて暮らす一人息子がいます。私の資産は私名義の持ち家及び預金です。
この度、将来を考えて遺言書を作ろうと思っています。持ち家は息子に譲りたいと考えていますが、他方で、妻には住み慣れた家で引き続き生活させてあげたいという思いもあります。
しかし、妻と息子は不仲であるため、私の死後、息子に家を譲ってしまうと、妻を追い出してしまうかもしれないという心配もあります。
私の希望を叶える方法はありませんでしょうか。
解 説
2020年4月1日より、民法に「配偶者居住権」が新設されました。この権利が認められる場合、建物の所有者が他の相続人となっても、引き続きその建物に無償で住み続けることができます。
配偶者居住権が認められるためには、次の条件を全て満たす必要があります。
- ① 被相続人が亡くなった時点で、建物の所有者が、被相続人の単独名義、または夫婦の共有名義であること。
- ② 被相続人が亡くなった時点で、配偶者が、①の建物に居住していたこと。
- ③ 次のいずれかに該当すること。
・遺産分割によって配偶者居住権を取得するものとされたとき。
・被相続人の遺言に、配偶者居住権を遺贈する旨の定めがあるとき(ただし、その遺贈が記載された遺言が2020年4月1日より前に作成されたものを除く)。
今回のケースでは、Aさんが亡くなった時点で、現在と同じく持ち家がAさん名義であり(①)、妻がその家に住んでいること(②)が前提となりますが、遺言書で、妻に持ち家の配偶者居住権を遺贈する旨の定め(③)をしておけば、Aさんの死後、妻に配偶者居住権が認められます。その上で、同じく遺言書で持ち家を息子に相続させる旨の記載をしておけば、持ち家の名義は息子としつつ、妻がその建物に無償で住み続けることが可能となります。
無償で住み続けられる期間は、別の取り決めがない場合、配偶者の終身の間とされています。