法定相続人が相続しない場合
法定相続人が相続しない場合として、相続放棄・相続欠格・推定相続人の廃除があります。
相続放棄
相続放棄とは、相続人が被相続人の権利義務を一切承継しないようにする制度で、各相続人が単独でできます。
相続放棄の方法
相続放棄は、相続があったことを知ってから3ヶ月以内に家庭裁判所に相続放棄する旨を申述しなければなりません。
また、相続放棄は、相続開始前にはできません。
相続放棄の効果
相続放棄をした者は、初めから相続人とならなかったものとみなされます。
また、相続放棄の場合、代襲相続は発生せず、相続の同順位者全員が相続放棄をした場合、後順位の者が相続人となります。
相続欠格
相続欠格とは、以下のような事由がある場合に法律上当然に相続人の資格をはく奪され、その者が相続人になれない制度です。 ただし、相続欠格の場合は、欠格者の子が代襲相続人となることは可能です。
相続欠格事由
- 故意に被相続人、先順位、同順位の相続人を死亡させ、または死亡させようとして刑に処せられた者
- 被相続人が殺害されたことを知りながら、これを告訴または告発しなかった者(その者に是非の弁別がない時、殺害者が自己の配偶者や直系血族であった場合は除く)
- 詐欺、強迫により被相続人の遺言の作成・撤回・取消し・変更することを妨げた者
- 詐欺、強迫により被相続人の遺言の作成・撤回・取消し・変更させた者
- 被相続人の遺言書を偽造、変更、破棄、隠匿した者
推定相続人の廃除
推定相続人の廃除とは、推定相続人に以下のような事由がある場合に、被相続人が自ら請求して、家庭裁判所にその者の相続権をはく奪する制度です。
そして、遺留分を持たない兄弟姉妹を相続させたくない場合には、遺言でそのようにできるため、廃除の対象は、遺留分を有する推定相続人に限られています。
また、推定相続人の廃除の場合も、廃除者の子が代襲相続人となることは可能です。
廃除事由
- 被相続人に対して虐待をしていたとき
- 被相続人に対して重大な侮辱を加えたとき
- 著しい非行があったとき
相続人の不存在
相続人の不存在とは、被相続人に相続人のあることが明らかでないときのことをいいます。
相続人全員が、相続放棄をした場合、相続欠格に該当する場合、推定相続人の廃除をされている場合も、相続人の不存在となります。
相続人の不存在となると、相続財産は法人となり、家庭裁判所から相続財産管理人が選任され、本当に相続人がいないかどうか調査することとなります。
そして、調査の結果、本当に相続人が存在せず、特別縁故者もいない場合は、相続財産は国庫に帰属することとなります。
法定相続人以外の相続人
特別縁故者
相続人が不存在の時、以下のような事由に該当し、家庭裁判所が相当と認めるときは、特別縁故者として、相続財産の全部又は一部を受け取ることができます。
- 被相続人と生計を同じくしていた者
- 被相続人の療養看護に努めた者
- その他被相続人と特別の縁故があった者
内縁の妻・夫
内縁の配偶者には、相続権はありません。
そのため、内縁の配偶者が相続財産を受け取るためには、上記の特別縁故者に該当しなければなりません。
なお、借家権については承継が認められており、判例上、貸主や相続人からの明渡請求を拒めることが認められています